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おすすめ度 :![]()
吉岡 忍
種類 : 文庫
高さ : 110hundredths-inches
4167547031
文藝春秋
長さ : 591hundredths-inches
ページ数 : 646 ページ
発行日 : 2003-01
出版社 : 文藝春秋
発売元 : 文藝春秋
重量 : 71hundredths-pounds
幅 : 417hundredths-inches
発送可能時期 : 在庫あり。
M/世界の、憂鬱な先端 (文春文庫) 購入者のレビュー
ウソが通念になる世の中![]()
本書では、宮崎が、「ロリコン」「変態」といった像からほどとおい人間であったこと明らかになる。著者が勝手にそう解釈したというのではなく、宮崎に関連する事実の集積が、マスコミのつくりあげた「変態」像の虚妄を自然に暴いているような感じであり、著者の考察を打ち消すのは容易ではないだろう。
〔余談:本書にかぎらず、真実をレポートするたぐいの本を読むと、「自分は本当のことを知った」一方で、「無数の人がウソを本当と思っている」という救いがたいギャップに、絶望的な思いがする。100万部売れる本があるとして、それは大変なベストセラーだが、しかし、それでも日本の人口の1%程度にすぎない。99%はその本を読まない。本書がどれだけ売れたかはしらないが、どう高く見ても1%を超えないだろう。国民の99%は宮崎=変態という像から解放されないまま、宮崎=変態、という認識が通念となっていく。真珠湾攻撃=宣戦布告なき奇襲という虚妄が通念となっているのと似て。〕
芸術論として秀逸![]()
本の主題ではないが、後半の芸術論は非常に胸に迫るものがあり、芸術というか絵を描くことあるいはオブジェを作ることの根本の態度を示していると思う。
私自身、絵描きであることもあり、吉岡さんの絵に対する言葉は思い出しておきたい。
本の主題は犯罪事件についての記述だ。分厚くて長いが、それについて論じる議論の土台となるべきものとして、読む価値のある本だ、と思った。後半に、議論は広い視野をもって展開する。
芸術あるいは表現すること、「言葉の獲得」についての言及はその中の一部分です。
報道されない事実を見た思い![]()
宮崎勤=ロリコン、と誰もが思っていた当時。そしてそのように報道したマスコミ。
それが本書を読むことにより、疑問符が頭の中に湧き上がる。
センセーショナルな報道に、真実が見えにくくなってしまう。
それがマスコミの宿業ともいえそうだが、だからこそ本書のように冷静に分析した書籍も必要なのだ、と改めて感じました。
「異常」?「正常」?![]()
事件の「異常性」のみが記憶に残った連続幼女誘拐殺人事件。「異常」がゆえに、自分とは関係のない、「逸脱」した加害者が犯した犯行、として捕らえていた事件。われわれが「異常」の一言で片付けてしまう事件を、著者はなぜその「異常」な人間が生まれたのかを、加害者の内面の深くまで切り込み、考える。さらに、「内面」だけでなく、事件が起こる「外面」である社会的背景にも目を向けることを怠らない。「異常快楽殺人者」の人間としての「内面」を見せられ、自分とは関係のないこととして、距離を置く姿勢を問い直さなければならない、と思わせられた。著者の分析は見事であるし、読者を引き込ませる筆力もすごい。あえて言うなら、個人の解離性同一性障害(多重人格)と、日本人の戦争に対する罪の意識を解離させ、ひたすら突っ走っていった戦後との類似関係の指摘は、どうなんだろう、と思った。それは、著者らしからず、「悪」の日本が「正義」の諸国を苦しめたという紋切型の構図で、太平洋戦争を捕らえているからだ。戦争というのは、善悪二元論的な思考では捕らえることができない問題ではないだろうか。筆者にそれがわからないはずはない。
私の魂は戦慄する![]()
著者は、本書に十年かけたという。その思索と呻吟の重みが、張りつめた緊張感となって読者に迫ってくる。
昭和天皇の重態が報じられるなかで遂行されていった幼女連続誘拐殺人事件の犯人、宮崎勤の妄想とファンタジーに彩られた精神のリアリティを内側から理解すること。そして、宮崎を「憂鬱な先端」としてもつ「世界」の実相を、つまり戦後復興から高度成長を経て、脱神話化された「生活圏の町」を実現し、大衆化された消費社会へとつき進んでいった戦後日本の社会システムやカルチャー、映像を代表とするメディアのあり様を外側から叙述すること。
この二つの視点は、著者の身を抉るような内省とあいまって、深い陰翳に富んだ作品世界を造形している。
それにしても、このような書物を前にて、どんな言葉を紡ぎ出せばいいのだろう。しゃべるな。語るな。沈黙するな。通奏低音のように響くこの言葉に、私の魂は戦慄する。
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